「辰」の原字は「蜃」で、これは蛤や浅蜊等の二枚貝が足を出している形を表した象形文字であり、弾力性のある肉を動かす状態を表していることから、「震」や「振」の意味を持つことになりました。
 「震」には①畏れる、②動かす、③震える、④脅す、⑤激しい、⑥速い、⑦雷、⑧地震、⑨威勢、というように様々な意味を持っていますが、総じて言えることは、人間が持つ自然界に於ける計り知れない力に対する畏敬の念を表わすことから、「辰」の文字に十二支で唯一空想上の動物である「龍」が当てられることになったと思われます。
次に 「振」は①振るう、②整う、の意味を持ち、いよいよ草木の形が整って活力が旺盛になった状態を表しています。

また相場の格言に「辰己天井」や「乾の借金、辰己で返せ」などが有りますが、辰年は一般的に上昇相場と言われ、辰年の勢いを表わす1つの例と言えるでしょう。
 これらのことから辰年は、今までの地道な努力が報われ、力が遺憾なく発揮され安定し、充実した年になると言えるでしょう。

 しかしながら当然良いことだけではございません。 「辰」が付く文字に、「辱」があります。「辱」には①恥ずかしめる、②辱めを受ける、③辱なく思う、といった意味があり、人は勢いが良いときや良い波に乗っているときに心に奢り高ぶりが生じ慢心してしまう傾向があり、周囲の人の意見を受け入れなかったり、人を見下すといった不遜な行為を取りがちです。非礼を働かれた人からは信義を失うことで足元を掬われ「辰」の持つ勢いが止まってしまっては意味がございません。そうならないための文字として「農」がございます。「農」には ①耕す、という意味の他に②勤勉な、③手厚く、といった意味がございます。勢いが有るときこそ、上手くいってる時にこそアンテナを張り巡らし周囲の意見に耳を良く傾け、また困っている人がいれば手を差し伸べていただけると、「辰」の勢いを周囲の援助や後押しを受けて更に加速することが出来ることでしょう。

 持っている力を存分に振るうことは大切ですが、成功が続くからと言って高圧的になって相手を辱めてはいけません。自分では意識していなくても、そういった態度は知らず識らずの内に相手に伝わり、恐れや恐怖を抱かせ、転じて怒りや憎しみといった感情を生んでしまい、信用を失うことで結果的に自分自身も辱めを受けることに繋がってしまいます。 せっかく努力が報われ成功を勝ち得たのですから、何事にも感謝の心を忘れず、勤勉に誠実に対処することが大切です。